Q.夫と不倫相手に慰謝料を請求して、離婚したいのですが、どのような証拠が必要になりますか?
不貞行為があったことを証明する証拠が必要
離婚協議では決着がつかず、家庭裁判所に対して離婚調停を申し立てた後、調停が物別れに終わって不成立になった場合、地方裁判所に離婚訴訟を起こすことができます。
この場合は、裁判所の判決による離婚を求めることになりますが、離婚が認められるためには、民法770条1項に定められている離婚原因があったことを証明しなければなりません。
不倫とは、すなわち不貞行為のことですから、民法770条1項1号の離婚原因となるので、判決による離婚ができるわけですから、不貞行為があったことを原告(この場合は妻)が立証しなければなりません。
不貞行為とは、自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と性交渉をおこなうことですから、夫と相手の女性との間に、性交渉があったのではないかということを強く推定させる何らかの証拠があればいいことになります。
不貞行為の相手方が誰であるかを特定できていることが前提で、証拠として有力なものとして考えられる物的証拠としては、一般的には以下のとおりになります。
1.住民票
不貞行為の相手方と同棲している場合に証拠になります。
もちろん、住民票を移しておらず、配偶者と同居している場合には証拠にはなりません。
2.不貞行為の相手方の戸籍謄本
不貞行為の相手方と配偶者との間に子どもがいる場合は証拠になります。
子どもがいるのではないかという疑いがあるにすぎない場合にも、相手方の戸籍を調べることは有効です。
3.子どものDNA鑑定書
不貞行為の相手方と配偶者との間に子どもがいて、子どもと配偶者の血のつながりがないことをもって不貞行為を否定する主張がされた場合、強力な証拠になります。
4.写真・録音データ・動画データ
たとえば、ホテルへ出入りしている写真や動画データがあれば、不貞行為そのものがあったことは証明できませんが、不貞行為があったことを強く推定させる資料になります。
また、夫婦での話し合いで相手を問いただすとき、その会話をスマートフォンのアプリで録音データとして残しておくと、有力な手がかりや証拠が得られる可能性があります。
5.興信所の調査報告書
探偵に依頼して不貞行為の現場を押さえることも有効です。
6.領収書・クレジットカードの利用明細書
配偶者が友人や一人で行くには不自然な場所に行っている場合や、不自然な支払いをしている場合に、不貞行為をしていることを推定する補助的な資料になります。
7.パソコンのデータ・スマートフォンのメール・SNSのやりとり・手紙
これらはすべて不貞行為の相手方とのやりとりが記録として残っている場合、有力な証拠となる可能性があります。
発見した場合は、スクリーンショットや画像を写真に収めておくなどしておくと良いでしょう。
8.弁護士会照会の回答書
弁護士に依頼すれば、弁護士会照会という制度が使えます。
弁護士会が不貞行為の相手方の情報を持っている団体などに情報の内容を問い合わせてくれるというものです。
この制度を使えば、不貞行為の相手方が誰であるかがわからないときや、配偶者と不貞行為の相手方がどのような行動をとっていたかを知ることができる場合があります。
たとえば、
・電話の契約者名や契約者住所(電話会社に対して)
・ホテルの宿泊記録(宿泊施設に対して)
・日本人出入国記録(入国管理局に対して)
といった個人情報を特定するための問い合わせができるのです。
ただし、問い合わせ先の団体が、プライバシー保護を理由に回答を拒否することもありますので思うような情報が得られない場合もあり、万能ではありません。
まとめ
・配偶者の不倫を疑った場合、まずは行動をよく観察し、相手方の存在の把握や特定に務めること
・自分で調べてもわからない場合は、興信所や弁護士などの専門家に依頼することも選択肢のひとつ
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