妻がネットショッピングで借金をしてまで買ってくる。
給料の半分が妻の浪費で消えている。
いくら注意してもやめようとせず、喧嘩も絶えず、妻への愛情も冷めてきた。
もう妻とは離婚したいが、離婚のときの財産分与で妻の借金も自分が負担しないといけないのか?
また、こちらが離婚したいと言えば、離婚の慰謝料も、離婚を言い出した側である自分が払わなければならないのか?
夫婦関係が冷めきっていれば、とりあえず離婚はできる
浪費癖がひどくて生活費を圧迫していることが原因で、喧嘩が絶えず、夫婦仲が冷めて、婚姻関係が破綻しているといえる状態になれば、「婚姻関係を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたるので、離婚をすることはできるといえます。
では、妻の借金も財産分与で夫が負担しなければならないのか?
まず原則として、離婚における財産分与では2分の1ルールが適用されます。
夫婦が婚姻中に共同して築き上げた財産は、夫婦が共有していると推定されるので、離婚するときは折半するルールです。
借金ももちろん財産のひとつですから、折半の対象となります。
しかし、借金の性質が問題になります。
浪費するためにした借金は夫婦共有の財産ではない
まず、民法では、夫婦が日常生活を送るために必要な費用は、夫婦が共同して負担することになっています。
これを、日常家事債務といいます。
日常家事債務は、衣食住など生活に必要不可欠な費用だけでなく、医療費・教育費などもこれに当たります。
妻がネットショッピングでこれらの日常家事債務を使っていたのであれば、夫婦が共同して負担しなければならないので、夫も借金の支払い義務が生じます。
しかし、宝石やブランド品など生活に必ずしも必要とはいえないものを買うために給料の半分も消費し、借金を重ねているのであれば、これは明らかに浪費であり、日常家事債務に当たるとはいえないので、夫に支払い義務は生じません。
上で述べたとおり、借金は原則として財産分与の対象なので、日常家事債務もまた財産分与の2分の1ルールの対象ですから、通常は夫も借金の半分を負担することになります。
しかし、浪費は日常家事債務にあたらないので、夫婦共有の財産とはいえません。
したがって、この場合、夫は妻が浪費をするためにした借金を負担する必要はありません。
では、離婚を言い出した方が慰謝料を払わなければならないのか?
この場合、夫は離婚による慰謝料を支払う必要はないと考えられます。
離婚による慰謝料とは、離婚の際に生じる損害を賠償させる金銭のことです。
夫婦仲が冷めて、婚姻関係が破綻しているといえる状態にいたり、「婚姻関係を継続し難い重大な事由」を生じさせたのは夫ではなく、むしろ日常的な浪費をやめなかった妻に責任があるといえます。
離婚慰謝料を支払う義務があるのは、離婚を言い出した側にあるわけではありません。
離婚にいたる原因を作ったと考えられる者(有責配偶者)に支払い義務があるのが通常です。
したがって、ネットショッピングの目的が浪費であり、それが原因で婚姻関係が破綻するにいたったといえる場合、夫は離婚による慰謝料を支払う必要はないと考えられます。
妻の浪費の証拠を押さえることが重要
いくら妻の浪費の事実を主張しても、証拠がなければどうにもなりません。
・領収書やクレジットカードの利用明細書
・預貯金通帳の記載(返済のために引き落とされた記録)
・ローンの利用明細書
・返済の請求書や督促状
などは、少なくとも押さえておきましょう。
クレジットカードのキャッシングを利用していることが疑われるようであれば、クレジットカード信用情報機関の開示制度を利用すれば、支払状況などの情報を得ることができます。
まとめ
・婚姻関係が破綻していれば、浪費癖の妻とは離婚できる
・日常家事債務にあたらないものを借金で支払った場合は、財産分与の対象とはならず、相手配偶者は負担する義務はない
・慰謝料は離婚の原因を作った配偶者が支払う
・浪費した証拠はきちんと押さえること
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