財産分与における支払い方法について注意すべきことを教えてください

財産分与を分割で支払う場合、離婚の当事者の経済事情が変わったときは、分割の額を変更できるか?

財産分与の支払い方法として、分割払いにすることができます。

これは、支払う義務のある者に、一括して支払う能力がない場合に定められるものです。

財産分与は、婚姻期間中、職についていなかった妻または夫にとって離婚後の生活費用となる性質も持っているので、あまりに長期に渡ったり、月々の支払額が定額なものにならない程度にする配慮する必要があります。

経済事情が変わったときの分割払いの対応は、養育費と財産分与とでは異なる

財産分与の分割払いは、財産をどのように分けるかということと、いくらの額になるのかを決めた上で、それを一定期間内に分けて支払うことを決める支払い方法です。

これに対して、養育費の場合は、子どもの生活費・教育費として支払われるものであり、これは支払う者の経済的能力によって決められます。

ですので、養育費の場合、離婚協議や調停などで一度決めた養育費の額は、支払う側の親の経済状況によって変化します。

これに対して、財産分与の分割払いは、そもそもあったはずの夫婦の共有財産を評価し、夫婦で分け合った金額を分割して支払うことを決めたものですから、その後の経済状況によって支払う額が変化するということは考えられません。

したがって、財産分与の分割払いの額は、支払う側の経済事情によって額を変更することはできないということになります。

財産分与を分割で支払う場合、支払う義務のある者が支払いを怠ったとき、残りの全額を一括して支払うように請求することができるか?

財産分与の分割払いは、金銭債権ですから、支払う義務のある者(債務者)が決められた期限までの支払いをしない場合、強制的に財産を差押えるなどの強制執行ができるようにしておく必要があります。

財産分与に限らない話なのですが、一般的に金銭債権で分割払いができるように取り決めた場合は、本来一度に支払われるべき金銭を回数を分けて支払うということにするわけですから、支払いを受け取る者(債権者)は、債務者に対して、支払いを猶予する(一括では請求しない)という期限の利益を与えたことになるので、債務者が一度支払いを怠ったとしても、残りの支払いについても、月々の期限が来るまでは支払いを請求できないということになります。これが原則です。

そこで、債権者としては、一度でも支払いを怠れば、残りの支払いについても、不払いがあった時点から直ちに一括して支払いを請求することができるという特約をつけるのが一般的です。こういう特約を定めた条項を、懈怠条項(けたいじょうこう)といいます。

そしてこれは財産分与の分割払いについても定めることができます。

ただし、この特約は支払いをする義務のある者にとっては生活の基盤を失わせかねない、非常に酷な結果となる可能性があります。

そこで、一括請求ができる範囲を限定して、1年分なり2年分といった一定額を一括請求でき、そして不払いが2回とか3回とか続いた場合は残りの全額を直ちに一括請求できる、という取り決めを特約として定めることが考えられます。

ちなみに、懈怠条項が定められている場合、支払期限までに支払いをしなければ、その時点から残額のすべてを直ちに一括して支払わなければなりませんが、債権者は債務者に対してその請求をした時点から年3%の割合で損害賠償請求をすることができます。

3%という割合は、両者の合意によってそれ以下にもできますし、利息制限法などに反しなければ、それ以上に定めることもできます。

何も定めなければ3%です。

3%という民法に定められた数字は、今後、定期的に見直され、変動する場合があります。

まとめ

・養育費の額は、当事者の経済事情によって増額や減額の請求を相手に対してすることができる。

・財産分与の額は、当事者の経済事情によって増額や減額の請求を相手に対してすることができない。

・分割払いは、債務者が不払いを起こした場合であっても、残りの全額を一括して支払うように請求することはできないのが原則

・なので、残りの全額を直ちに一括請求できるようにするためには、そのような特約を付ける必要がある。

・残りの全額を直ちに一括請求できるようにした場合、その請求をした時点から年3%の利息をつけて全額を支払うように請求できる

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