養育費の支払い義務者である夫が、働くことができるのに働こうとしません。
無収入の夫は養育費を免除されるのですか?
また、もし払わせることができるなら、どうやって養育費の計算をしますか?
働ける能力があるなら無収入であっても養育費は支払わなければならない
養育費の支払い義務者が無職で無収入であれば、養育費の算定は、原則的に、収入ゼロとして取り扱います。
しかし、働こうと思えば働けるはず(潜在的稼働能力がある)であるにも関わらず、働こうとしない場合に収入をゼロにして養育費の支払いを免れさせるのは適切とはいえません。
したがって、働こうと思えば働ける能力があるなら、たとえ無収入であっても養育費は支払わなければなりません。
そして、そういった場合は、支払い義務者の収入を推定して養育費の算定をおこなうことになります。
働けるのに働こうとしない人の年収の推定の方法がある
義務者の収入を推定するときに有効な資料が、賃金センサスというものです。
賃金センサスとは、正式には賃金構造基本統計調査といい、厚生労働省が毎年実施している調査です。
賃金センサスは、雇用のされ方、就業の仕方、職種、性別、年齢、学歴、勤続年数、経験年数などの区分別に、国民の賃金の実態を調べた結果なのです。
つまり、義務者(事例では夫)の性別、年齢、学歴などの区分について、賃金センサスを見れば、その収入を推定することができるのです。
たとえば、下のリンクは令和元年の賃金センサスの一部です。
支払い義務者である夫が30歳で、学歴が大卒であると仮定しましょう。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2019/dl/03.pdfこれによると、仮に無収入の夫が働いていれば321万8000円の収入があると推定することができます。
あとは、これを総収入として支払い義務者の基礎収入を求め、養育費の算定を行えばよいことになります。
養育費のくわしい算定の仕方についてはこちらの記事をご覧ください。
賃金センサスで養育費の算定をするのは支払い義務者にとっては不利
ちなみに、賃金センサスに示されている賃金の額は、あくまで平均的な金額なので、実際に働いている多くの人の賃金よりも、高めに算出される傾向があります。
つまり、賃金センサスの金額を使って無収入の人の養育費を計算すると、実際に働いている場合よりも多く養育費を支払わなければならない可能性が出てくるということを意味します。
これは無収入の支払い義務者にとって不利になるわけです。
このことを逆手に取って、離婚協議においては、「賃金センサスによって養育費を計算すると実際に働いている場合よりも高くなるから、早く就職したほうがいい」と言えば、心理的な圧迫になるかもしれません。
まとめ
・働ける能力があるなら無収入であっても養育費は支払わなければならない
・収入の推定をするときは、厚生労働省の賃金センサスをつかう
・賃金センサスの賃金の額は、高めに算出される傾向があるため、支払わなければならない養育費は高くなることがある
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