不倫をしていた夫が離婚を求めてきました。
離婚原因となることをしていた人から離婚を請求することはできるのですか?
不貞をはたらいた者(有責配偶者)からの離婚請求が認められる場合がある
民法では、クリーンハンズの原則というものがあります。
自らの手を汚している者は、法の救済を受けることが許されないというものです。
自ら不貞という離婚原因を作っておきながら離婚を求めようという態度は、道義的に見ても許されるものではなく、クリーンハンズの原則に反すると言えます。
最高裁判所の判例でも、クリーンハンズの原則にのっとり、不貞をはたらいた者(有責配偶者)からの離婚請求は認めないのが原則です。
しかし、壊れてしまった婚姻関係を無理矢理続けさせるより、婚姻関係を解消して、新しい関係も重視すべきではないかという考え方もあります。
そこで、一定の場合、有責配偶者からの離婚請求が認められるようになっています。
どのような場合に、有責配偶者からの離婚請求が認められるか
最高裁判所の判例(昭和62年9月2日判決)では、次のような要件が揃った場合、有責配偶者からの離婚請求が認められるとしています。
1.長期間にわたる別居をしていること
2.未成熟の子がいないこと
3.相手方配偶者が酷な状態におかれていないこと
1.長期間にわたる別居
どれくらいの期間を長期間というのかは、一概には言えません。
判例では、30年でやっと長期間の別居と認めた場合もあるし、8年程度で長期間と認めた場合もあります。
一方、11年程度でも長期間の別居とは言えないとされた例もあります。
これだけのバラつきがでるのは、夫婦の年齢とか、同居期間の長さと別居期間の長さを比べてどうであるかとか、それぞれの夫婦が抱えている事情が総合的・相対的に考慮されているからです。
ですから、たとえば10年別居したから長期間にわたる別居をした、とは一概には言えないことになり、別居が長期間にわたるかどうかを自分で判断するのは難しいといえます。
2.未成熟の子がいない
未成熟の子がいる場合は、子どもの幸せを優先することになります。
つまり、上記の要件を満たしていないことになるので、クリーンハンズの原則によって、有責配偶者からの離婚請求が認められることはありません。
なお、判例によると、17歳の高校生は未成熟子で、24歳の大学生は未成熟子ではないとされています。
3.相手方配偶者が酷な状態におかれていない
有責配偶者の相手が離婚によって、精神的・社会的・経済的に不利な状況に置かれることは避けなければなりません。
もし離婚によって相手方配偶者が精神的・社会的・経済的にみて極めて過酷な状態に置かれるとしたら、有責配偶者からの離婚請求は理不尽であり、これもまた、クリーンハンズの原則に反することになりますので、離婚は認められません。
まとめ
・不貞をはたらいた有責配偶者からの離婚請求は、一定の場合、認められることがある
・別居が長期間にわたるかどうかを自分で判断するのは難しい
・迷ったら専門家に相談すること
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