内縁の相手と別れるとき、慰謝料を請求できる?

籍を入れていない内縁の夫と別れたいです。理由は内縁の夫の浮気です。

彼とは20年同棲してきました。別れるときに慰謝料を請求することができますか?

また、最近、彼にひどい暴言を吐かれたこともあります。その慰謝料も合わせて請求したいのですが、どうでしょうか?

内縁は原則として、法律上保護される利益とは言えない

婚姻届を出した婚姻関係のことを法律婚といいます。

一方、内縁とは、婚姻届を出していないけれども事実上の夫婦関係にある関係のことです。

民法で定められている婚姻関係についての定めは、法律婚を対象としています。

つまり、内縁は民法が想定する婚姻関係とされていないので、原則として、民法の保護の対象にはならないのです。

これは、内縁関係を解消する場合も同じことであり、法律婚を対象とした民法の離婚の定めは適用されません。

そもそも、法律婚にある夫婦であれば、浮気(不貞行為)は離婚の理由となることであり、不貞行為が原因で離婚をするのであれば、慰謝料を請求することができます。

慰謝料の請求とは、民法709条の不法行為による損害賠償請求に基づくものです。

つまり、709条の文言に当てはまれば、慰謝料を請求することができるという理屈です。

(不法行為による損害賠償)

第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

内縁は不法行為の要件に当てはまらない

不法行為が成立するためには、709条が定める要件に当てはまらなければなりません。

つまり、何を言っているのかというと、浮気をした者に浮気をするという「故意又は過失」があり、「他人の権利又は法律上保護される利益」を「侵害」することによって「損害」という結果が生じて、初めて浮気(不貞行為)という不法行為に対する損害賠償請求をすることができるということです。

しかし、内縁は法律婚ではないので、709条のなかの文言にある「法律上保護される利益」を持っている関係ではありません。

したがって、内縁の妻は夫に対して慰謝料=損害賠償を請求することができないということになります。

では、暴言はどうか?

暴言を吐かれたということですが、暴言の内容や程度にもよります。

しかし、暴言によって精神的なショックを受けたのだとしたら、709条の不法行為は十分に成り立ちます。

暴言を吐かれて精神的にショックを受けたということと、内縁関係を解消すること(つまり別れるということ)が法律上保護されるべき利益であるかという問題とは無関係だからです。

暴言を吐かれたということによって傷ついた名誉感情は、内縁問題や離婚問題とは関係なく法律上保護されるべき利益であり、守られるべき権利であるわけです。

ですから、内縁の夫が暴言を吐くことについて「故意又は過失」があり、内縁の妻の名誉感情という「他人の権利又は法律上保護される利益」を「侵害」することによって精神的ショックという「損害」という結果が生じ、暴言を吐くという行為と精神的ショックの間に因果関係があれば、慰謝料=損害賠償請求をすることができることになります。

慰謝料を請求するときに忘れてはならないこと

慰謝料を請求するときに重要なことは、証拠です。

証拠という事実を証明するモノがなければ、被害者が損害を受けたという証明をすることができません。

今回の事例でいうと、内縁の夫が暴言を吐くという行為によって内縁の妻が精神的ショックをうけたという証拠が必要です。

その2つがそろって初めて暴言という行為と精神的ショックという損害の因果関係を証明することができるということになります。

具体的に証拠となりそうなもの

一般的には、以下のものが挙げられます。

内縁の夫が暴言を吐いたという証拠

・夫の発言を録音した音声データや動画データ

・夫に言われた内容をくわしく記したメモや日記

・家族や友人など、夫が暴言をときに一緒にいた第三者の証言

・大声を出していた場合は、近所の人などの第三者の証言

内縁の妻が精神的ショックを受けたという証拠

・心療内科等で受診をしたときの、医師から交付された診断書

まとめ

・内縁関係は、原則として法律上保護される利益とはいえないから、浮気などの不貞行為をされても慰謝料を請求することができない

・暴言を吐かれた場合は、慰謝料を請求できる場合がある

・加害者の行為があったことを示す証拠を残しておくこと

・被害者の損害があったことを示す証拠を残しておくこと

・その2つの証拠がそろって初めて不法行為と損害の因果関係が証明でき、慰謝料を請求することができる

コメント

タイトルとURLをコピーしました