養育費は簡単に計算できる!養育費の算定方法を具体例を挙げて説明

離婚協議のときに大きなテーマとなる養育費をいくらにするかという問題。

そもそも養育費をいくらにするかというのは、夫婦双方が納得しているのであれば、任意に決めてしまっても構いません。

そういう意味では、養育費の適正な金額というものは、あってないようなものだと言ってもいいでしょう。

しかし、現実にはそうではなく、できるだけ多く支払ってほしい側とできるだけ少なく支払いたい側の対立が起こるわけですから、何らかの相場というものは存在するわけです。

そのとき、どちらにとっても納得できる公平な金額でなければ、円満な話し合いはできず、裁判までもつれてしまう原因ともなります。

そこで今回は、養育費の公平な算定方法を説明します。

そもそも養育費の分担とは、具体的には何をすることなのか?

親には子どもの扶養する義務があります。親権者だけでなく、親権者とならなかった親にも扶養義務が生じます。

そこで、双方の収入に応じて養育費を負担すべきだということになります。

そのため、子どもを養育する親は、お互いの収入に応じて相手に養育費の負担を求めることができるのです。

養育費の計算式

それでは、具体的に、養育費の公平な算定方法を説明します。

紹介する公平な養育費の算定の方法は、全国の家庭裁判所が離婚調停の実務で使用している算定方式です。

これを、夫婦の話し合いである離婚協議においても使うことによって争いが防げると考えられます。

この算定方式は、養育費の額を誰でも素早く簡単に計算できるようにしたものです。

養育費を求める者(権利者)が1人の15歳未満の子どもを養育していて、養育費の負担を求められる者(義務者)が1人で生活している場合、義務者の基礎収入(注1)の方が権利者の基礎収入よりも大きければ、義務者が権利者に養育費を支払わなければなりません。

では、まずは実際の詳しい計算式を紹介します。

そのあと、具体的な例を挙げて実際に計算式を使ってみます。

(注1)基礎収入:実際の総収入から税金、特別経費(住居費・医療費など)職業費(就労するために必要な被服費・交通費・交際費など)を差し引いた金額。統計的に算出された係数をかけて算定する。

給与所得者の基礎収入=総収入×0.34〜0.42

自営業者の基礎収入=総収入×0.47〜0.52

(1)まず子どもの生活費がいくらかを求める

ア)15歳未満の子どもが1人の場合

子供の生活費=義務者の基礎収入×55÷(100+55)

イ)15歳以上の子どもが1人の場合

子供の生活費=義務者の基礎収入×90÷(100+90)

ウ)15歳未満の子どもが2人の場合

子供の生活費=義務者の基礎収入×55×2÷(100+55×2)

エ)15歳以上の子どもが1人と15歳未満の子どもが2人の場合

子供の生活費=義務者の基礎収入×(90+55×2)÷(100+90+55×2)

(2)次に義務者が負担すべき養育費を求める

義務者の養育費負担額=(1)で求めた子供の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)

注意点

・上記の計算式の100、55、90といった数字は、生活費係数のことで、基礎収入を生活費の指数の割合によって分けるための数字のことです。

親が100、15歳未満の子どもが55、15歳以上の子どもが90です。

要するに、収入に対してかかる生活費の割合ようなものを統計的に割り出したものであり、ここではあまり深く考える必要はありません。

・権利者が義務者よりも収入が多い場合は、義務者の収入と同一であると仮定して計算した額が上限となります。

・今回紹介した計算式は、会社員などの給与所得者を対象としたものです。

自営業者のための計算式は、こちらの記事をご覧ください。

・今回紹介した計算式は、東京家庭裁判所と大阪家庭裁判所によって合同で研究考案され、全国の家庭裁判所において離婚調停の実務で使用されているものです。

離婚協議や離婚調停で無駄なトラブルが起こることを防ぐために、簡単に、早く、公平に養育費を決めるためのものですから、この計算式を使用する場合は、そのことを当事者同士でよく理解したうえで使用してください。相手の理解を得られないまま使用すると、かえって争いが複雑になり、長期化する恐れがあります。

具体的な数字で実際に計算してみよう

それでは、具体的な例を挙げて、上で説明した計算式に当てはめてみましょう。

具体例(給与所得者の場合)

義務者:夫(年収500万円)

権利者:妻(年収120万円)

子ども:16歳が1人、12歳が1人

まずは義務者である夫の基礎収入を求める

基礎収入を求めるための係数に幅があるので、下限と上限の両方を求めます。

夫の基礎収入①=500万円×0.34=170万円

夫の基礎収入②=500万円×0.42=210万円

子どもの生活費を求める

15歳以上の子どもが1人と15歳未満の子どもが1人なので、生活費の係数は90と55になります。

夫の基礎収入ごとに計算します。

子どもの生活費①=170万円×(90×1+55×1)÷(100+90×1+55×1)=約100.6万円

子どもの生活費②=210万円×(90×1+55×1)÷(100+90×1+55×1)=約124.2万円

さいごに、義務者が負担すべき養育費を求める

義務者の基礎収入を計算しておきます。

義務者の基礎収入=120万円×0.34〜0.42=40.8万〜50.4万円

これも、夫の基礎収入ごとに計算します。

このとき、夫の基礎収入の低い方の額には妻の基礎収入の低い方の額を、夫の高い方の額には妻の高い方の額を入れます。

そうすることで、養育費の下限と上限がわかります。

養育費の下限(年額)=100.6万円×40.8万円÷(100.6万円+40.8万円)=約29万円(月額で2万4000円程度)

養育費の上限(年額)=124.2万円×50.4万円÷(124.2万円+50.4万円)=約35万8000円(月額で3万円程度)

以上から、具体例においては、夫は妻に対して、月額で2万4000円〜3万円程度の養育費を支払えばよいということがわかります。

あとは、2万4000円〜3万円の間で調整をする話し合いをすればよいということになります。

養育費を計算する方法のまとめ

・夫と妻の基礎収入の上限と下限を求める

・総収入の資料は、給与所得者は源泉徴収票、自営業者は確定申告書を使う

・夫の基礎収入の子どもの生活費を求める(上限と下限それぞれ)

・養育費を求める

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