いつも妻からセックスを拒否されます。
その場合、離婚の請求は認められますか?
セックスの拒否だけでは離婚理由にはならない
結婚生活は、夫婦の愛情と信頼関係で成立しており、夫婦間のセックスというのは、愛情と信頼関係の現れとして自然なものであり、重要な行為です。
セックスの重要性を重視すると、そのような重要な行為をつねに拒否するということは、離婚の理由になりそうにも思えます。
しかし、身体的な障害があったり、性的不能であったりするという場合には、離婚の理由になる可能性は低いといえます。
また、高齢者であれば、セックスに重点をおく人も少なくなることから、離婚理由にもなりにくいと考えられます。
問題は、高齢でもなく、健康な夫婦間の場合です。
夫婦の一方が長期間にわたってセックスを拒否し、その結果として愛情や信頼関係が失われたことによって婚姻生活が実質的に破綻してしまえば、その場合は「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)として、離婚理由となる可能性が高まります。
実際に、新婚旅行中から、夫が妻に指一本触れることもなく、夫婦としての会話もなかったため、妻が実家に帰って別居に至ってしまったという事案で、協議離婚をし、妻が夫に慰謝料を請求して500万円の慰謝料が認められたケースがあります(京都地裁平成2年6月14日判決)。
このケースは、同居期間が2ヶ月足らずで、夫婦間の愛情や信頼関係が築けず、婚姻関係が破綻していると判断されたため、慰謝料の請求が認められたものです。
このように、単にセックスを拒否されたというのみならず、そのことによって婚姻関係が破綻しているということが、離婚理由となるポイントといえそうです。
セックスレスの場合はどうか
セックスレスの場合も、セックスの拒否と同様に、セックスレスが原因で信頼関係がなくなって婚姻関係が継続できないかどうかがポイントでしょう。
長期間セックスをしないことについて、夫婦双方が納得していたり、黙示または明示の合意があったうえで婚姻関係を継続しているのであれば、いくら長期間にわたってセックスレスであるといっても、何の問題もないことになります。
どれくらいの期間セックスレスであれば婚姻が破綻しているといえるか?
これについては、3年半にわたってセックスがなかった夫婦に離婚を認めた判例(京都地裁昭和62年5月12日判決)があります。
まとめ
・セックスを拒否されたというだけでは離婚理由にはなる可能性は低い
・ポイントは、セックスの拒否によって、別居などの婚姻関係の実質的な破綻に至ったといえるかどうか
・長期間のセックスレスも同様
・3年半のセックスレスで離婚が認められた例がある
・セックスの拒否やセックスレスが続いた場合、離婚協議や裁判上の証拠として、メモや日記などを残しておくこと
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