児童手当や子ども手当や生活保護を受給していると、養育費の支払い義務がある夫(または妻)は養育費を減額されるのですか?
養育費の支払いが優先される
養育費というものを考える場合、児童手当や子ども手当や生活保護といった、国や地方自治体からの公的扶助という社会保障との関係は、どう考えればいいのでしょうか?
日本の憲法では、個人に私有財産が保障され、契約自由の原則が適用されています。
つまり、個人は自己の財産と労働力で生活することが前提となっています。
だからこそ、職業選択の自由や営業の自由が認められているわけです。
しかし、夫婦が協力していくら頑張っても、自分たちの収入だけでは生活していけない事情が生じる場合もあります。
公的扶助というものは、その場合にのみ受けることができる制度です。
ですので、原則として、夫婦や親族間の私的な扶助が優先されます。
公的扶助は、私的扶助を補うものという位置づけです。
ということは、離婚した夫婦の子どもについての養育費の額を考える場合、私的扶助である養育費が優先されるのであって、児童手当や子ども手当などの公的扶助は補助的に支給されるものであるということになります。
その逆ではありません。
つまり、児童手当や子ども手当、または生活保護をもらっているからといって、養育費の額を減額していいということにはならないのです。
養育費の額の決め方は、夫の収入と妻の収入、子どもの年齢と数によって決められます。
児童手当や子ども手当の額が決まるのは、養育費の額が決まった後なのです。
私的扶助が優先されるという前提があるから、公的扶助の額はそもそも養育費の額が決まらないと計算できない算定式になっているのであって、公的扶助の受給額は、養育費の額が多ければ少なくなるし、養育費の額が少なければ公的扶助の受給額は多くなります。
たとえば、妻が公的扶助をもらっているからといって養育費の減額をせよ、と要求してくる夫は、このことを知らないのです。
したがって、児童手当や子ども手当などの公的扶助を受給している場合であっても、離婚協議のときに決めた養育費の額を減額する理由にはなりません。
まとめ
・原則として、夫婦や親族間の私的な扶助が優先され、公的扶助は、私的扶助を補うものという位置づけである
・養育費の額の決め方は、夫の収入と妻の収入、子どもの年齢と数によって決められる
・私的扶助が優先されるという前提があるから、公的扶助の額はそもそも養育費の額が決まらないと計算できない算定式になっている
・児童手当や子ども手当などの公的扶助を受給している場合でも、離婚協議のときに決めた養育費の額を減額する理由にはならない
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