DV(家庭内暴力)での離婚で慰謝料の額と、身を守る方法

具体的な事例で見てみましょう

夫:会社員

妻:地方公務員

子どもは娘が1人

夫は妻に暴力をふるっており、夫は妻がご飯ではなくスパゲッティを用意したことの腹を立て、妻を殴ったり蹴ったりしたため、妻はスキを見て娘を連れて逃げ出し、そのまま夫と別居した。

妻は夫に500万円の慰謝料を請求する訴訟を起こした。

裁判所の判断はどうだったか

400万円の支払い命令

暴力での慰謝料は相当高額な金額が認められる傾向があります。

この事例における判例(横浜地裁平成9年4月14日判決)は、妻の落ち度もないうえ、何より暴力行為という点を強く非難したものです。

判例は、暴力行為が原因で婚姻関係が完全に破綻したとしました。

また、そのひどい暴力は、両者の「物の見方や考え方の違い」が原因とし、

暴力をふるった「夫の物の見方や考え方にそれなりの合理性がないとはいえない面がある」とはしながらも、

「妻や客観的な物の見方や考え方を理解しようとせず」、夫の意にそぐわない妻に対して「いきなり暴力行為に及んだことを決して正当化することがはできず」、夫の暴力行為は「強く非難されるべきである」と断罪しています。

結果、夫には妻の「精神的苦痛を慰謝すべき義務がある」として、夫に対して慰謝料400万円の支払いを命じる判決を下しました。

このように、暴力行為は婚姻関係が破綻に至るための直接の原因となり、道義的な非難の程度も高くなるため、慰謝料は高額になる傾向があるといえます。

配偶者から暴力を受けた場合の対応

DVなどで夫や妻から暴力を受けた場合、民事的には慰謝料を請求することになりますが、そのような法律的な対処よりも、まずは実際に差し迫った危険から身の安全を図る必要があります。

対処法としては、次のようなものが挙げられます。

1.警察署や交番へ駆け込む

差し迫った暴力から身を守るためには、まず警察を頼りましょう。

警察官によって現行犯性が認められればすぐに逮捕されます。

刑事訴訟法 第212条(現行犯人・準現行犯人)

現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者を現行犯人とする。

2 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終ってから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。

 一 犯人として追呼されているとき。

 二 贓物ぞうぶつ又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。

 三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。

 四 誰何すいかされて逃走しようとするとき。

2.警察署に告訴する

現行犯ではなくても、過去に暴力を振るわれたという場合は、警察署に相談し、告訴状を提出するなどの対応も考えられます。

この場合は、告訴を受理してもらいやすくするために、暴力を振るわれた証拠として、医師の診断書や、スマホでの録音データ、隠しカメラでの撮影データなどを持ち込むと良いでしょう。

告訴状などの書類は、本来は警察官に作成してもらうこともできるはずなのですが、実際には被害者側が用意しなければ受理してもらえません。

告訴状と添付書類、もろもろの証拠物件は、行政書士や弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。

ストーカー被害を受けている場合は、警察に相談すると、相手に対して、警告や禁止命令を出してもらうことができます。

3.婦人相談所を利用する

配偶者の暴力によって住む場所を失ったり、ストーカー被害にあう恐れがあるときは、婦人相談所が被害者を一時的に保護します。

子どもと一緒でも利用できます(子どもの年齢制限があることがある)。

配偶者暴力防止法により、配偶者暴力相談支援センターの施設として設置されています。

全国の婦人相談所の連絡先の一覧表 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000402433.pdf

4.裁判所に保護命令を出してもらう

保護命令とは、被害者が暴力によって重大な危害を加えられる恐れがあるときに、裁判所が被害者を保護するために発令するものです。

「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(いわゆるDV法)によります。

保護命令には次の2種類があります。

接近禁止命令

被害者の住まいや職場でのつきまとい・徘徊を6ヶ月間禁止する命令。

退去命令

被害者の住まいが加害者と同じである場合、加害者に対して退去を命じる命令。

これらの保護命令に違反すると、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金に処せられます。

まとめ

・暴力行為は、直接的に婚姻関係が破綻するとされるため、離婚が認められやすい

・暴力行為は、道義的な非難の程度も高くなるため、慰謝料は高額になる傾向がある

・暴力を受けた場合の対応として、警察、裁判所、婦人相談所を利用することを考える

・暴力を受けたらすぐに医療機関で診断書を取ること

・日常的に暴力を受ける場合は、部屋に隠しカメラなどを設置しておくこと

・場合によっては、弁護士などの専門家に相談する

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